好酸球性多発血管炎性肉芽腫症候群

1. 疾患概念

気管支喘息が先行し、その後好酸球増多を伴って全身性血管炎の発症に至る。多発単神経炎を80%以上で認めるほか、呼吸器障害などの臓器障害を伴う。MPO-ANCAは約半数の患者で陽性である。病理学的には中小型血管の壊死性血管炎とともに、血管外の組織の肉芽腫性病変と好酸球浸潤を特徴とする。従来、アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis: AGA)あるいはChurg Strauss症候群の呼称があったが、2012年改訂Chapel Hill分類において小型血管炎のうちのANCA関連血管炎のサブカテゴリーの中へ分類され、現在の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (eosinophilic granulomastosis with polyangiitis: EGPA)に名称が変更された。


2. 疫学

2009年厚生労働省疫学班および難治性血管炎研究班が共同で行った全国疫学調査(2009年全国疫学調査)から受療者数は約1900人と推定されている。発症年齢は、40−69歳が66%を占め、平均が約55歳、男女比は1:1.7と女性に多い。


3. 病態生理

何らかの抗原に対するアレルギー反応の関与が想定されている。抗原としてスーパー抗原(B型肝炎ワクチンなど)、アスペルギルスなどの報告があるが、不明である。ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)との関連を示唆する報告もあるが、2009年全国疫学調査においてもLTRAの使用は約35%と限られており、現在ではその関連は乏しいとされている。


4. 症状

気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患が先行し、その後、血管炎の全身症状としての発熱や体重減少が生じる。また多発単神経炎によるglove and stocking型の知覚および運動障害、虚血性腸炎による腹痛や下血、皮膚血管炎により紫斑が生じる。気管支喘息から血管炎発症までは3年以内が多いと報告されている。
2009年に行われた全国疫学調査において、多発性単神経炎は90%以上の症例に認められた。皮膚症状(紫斑、紅斑、潰瘍など)は約60%の症例で認められた。頻度は低いものの呼吸器症状(肺胞出血、間質性肺炎、胸膜炎など)、循環器症状(虚血性心疾患、心外膜炎、心筋炎など)、消化器症状(消化管出血、腹膜炎など)に加え、腎機能障害(糸球体腎炎)、脳血管障害に伴う症状、関節痛・筋痛などの症状が生じる。


5. 検査

1)血液検査

末梢血中の好酸球数の増多を認める。血清IgE値の上昇に加え、血清リウマトイド因子陽性例も約70%と高率に認める。MPO-ANCAの陽性率は約50%である。


2) 画像検査

胸部単純レントゲンでは、移動性の非区域性限局性陰影が最も多く、非空洞性結節や網状影も認める。高分解能CT検査では、好酸球性あるいは肉芽腫性炎症性病変を示す肺実質陰影、小葉中心性結節、気管支壁肥厚、小葉間隔壁の肥厚の他、しばしば胸水も認める。心病変に伴う心不全を合併することもある。


3)病理組織検査

中・小型の筋型動脈を中心に、細動脈、毛細血管、細静脈レベルの血管に壊死性血管炎が認められる。血管炎所見は全身臓器に起こりうるが、心臓、肺、肝臓、消化管、腎臓、皮膚に好発する。障害血管壁は壊死を伴い、周囲には好酸球浸潤が認められる。また多核巨細胞の出現を認める場合もある。出現頻度は必ずしも高くないが、全身の結合組織間質、特に皮膚や心臓に認められる好酸球浸潤を伴う血管外肉芽腫は本疾患に特徴的な所見である。


6. 診断

診断基準として本邦においては旧厚生省の診断基準(1998年)があり(表1)、特定疾患個人調査票もこれに準拠している。最近では、Lanhamの基準(表2)や米国リウマチ学会の基準を含めたEMEA(European Medicine Agency)アルゴリズム(Wattsらの全身性血管炎分類のアルゴリズム)も用いられることがある。
なお、本疾患は厚生労働省の指定難病に指定されており、難病情報センターに記載がある(http://www.nanbyou.or.jp/entry/3878)。


7. 治療

「治療方針決定のための重症度」と病型により個々の症例の治療を決める。ここではJMAAVプロトコールを中心に示す。JMAAVプロトコールの治療方針決定のための重症度分類 (表3)、臓器障害の定義 (表4)を表に示す。


1) 寛解導入療法(初期治療)

① 軽症例
  • プレドニゾロン(PSL)0.3-0.6mg/kg/日(15-30mg/日)経口投与する。
  • 経口シクロホスファミド(CY)あるいはアザチオプリン(AZA) 0.5-1.5 mg/kg/日(25-100mg/日)を適宜併用する。
② 重症例
  • ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン0.5-1.0g/日×3日間)あるいはPSL 0.6-1.0mg/kg/日(40-60mg/日)を行う。
  • また、4週以内に免疫抑制薬シクロホスファミド間欠的点滴静注(IVCY) 0.5-0.75g/m2 または 経口CY 0.5-2.0 mg/kg/日(50-100mg/日)併用する。
  • 腎機能障害(血清Cr≧1.8mg/dL)時や75歳以上の高齢者では75-50%に減量
  • IVCYの投与間隔は3−4週間で総投与回数は3−6回、IVCY投与2週間後の白血球数が3500/μL以上を保つよう投与量を調節する。
  • 経口CY投与は3−6ヶ月とし、CYを服用できない症例ではAZA1.0-2.0mg/kg/日(50−100mg/日)を6ヶ月以上投与とする。
  • 上記治療期間中は感染リスクが高いためトリメトプリム/スルファメトキサゾール(ST)合剤2錠/日を週2回、または1錠/日を連日予防的に投与する。
③ 最重症例

重症例と同様にPSLとIVCYあるいは経口CYを施行する。また血漿交換(2.0-3.0L×3日間を1クールとして)を併用する。感染症リスクに対してST合剤2錠/日を週2回、または1錠/日を連日予防的に投与する。


2) 寛解維持療法

  • PSL 5-10mg/日で再燃に注意して経過観察する。なお、血管の内腔狭窄および血栓成形に関し、抗凝固療法(ワーファリンなど)、血管拡張剤(プロスタグランジン製剤)、抗血小板剤(ジピリダモールなど)を投与する。
  • 経口CYは投与後6ヶ月以内に中止するのが好ましいが、AZAに変更して投与継続するのも可である。
  • 治療抵抗性の神経障害に対しては高用量ガンマグロブリン静注療法も保険適応となっている。PSL投与に伴い糖尿病、高血圧症、高脂血症、骨粗鬆症などに対しても注意を要する。

8. 予後

生命予後は5年生存率が97%という報告もあり、全般的に良好である。一方で、約10%の症例は治療抵抗性であり、腸管穿孔、心タンポナーデや心筋障害による心不全、腎機能障害、脳血管障害などの重篤合併症を来たし、予後不良例もある。多発単神経炎による知覚異常は遷延する事が多く、約2/3の症例で不可逆的障害を残す。


参考文献

  1. 槇野博史、松尾清一編: ANCA関連血管炎の診療ガイドライン(2014年改訂版).
  2. Lanham JG, et al.: Systemic vasculitis with asthma and eosinophilia: a clinical approach to the Churg-Strauss syndrome. Medicine 1984; 63: 65-81.
  3. Masi AT et al.: American College of Rheumatology 1990 criteria for the classification of Churg Strauss syndrome (allergic granulomatosis and angiitis). Arthritis Rheum 1990; 33: 1094–100.
  4. 難病情報センター好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (http://www.nanbyou.or.jp/entry/3878).
  5. 公益財団法人日本リウマチ財団教育研修委員会、一般社団法人日本リウマチ学会生涯教育委員会編集、天野 宏一: ANCA関連血管炎—好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群). リウマチ病学テキスト改訂第2版, p273−276, 診断と治療社, 2016.

表1. 旧厚生省の診断基準(1998年)

1. 主要臨床所見

(1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎

(2)好酸球増加

(3)血管炎による症状;
発熱(38℃以上、2週間以上)
体重減少(6ヶ月以内に6kg以上)
多発性単神経炎
消化管出血
紫斑
多関節痛(炎)
筋肉痛(筋力低下)


2. 臨床経過の特徴

主要臨床所見の(1)、(2)が先行し、(3)が発症する


3. 主要組織所見

(1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在
(2)血管外肉芽腫の存在


4. 判定

1. 確実(definite)
(a)1.の主要臨床所見のうち、⑴、⑵および⑶の1つ以上を示し、3.の主要組織所見の1項目を満たした場合
(b)1.の主要臨床所見の3項目を満たし、2.の臨床経過の特徴を示した場合

2. 疑い(probable)
(a)1.の主要臨床所見の1項目および3.の主要組織所見の1項目を満たす場合
(b)1.の主要臨床所見の3項目を満たすが、2.の臨床経過の特徴を示さない場合


5. 参考となる所見

(1)白血球増加(≧10,000/μl)
(2)血小板増加(≧40万/μl)
(3)血清IgE増加≧600 U/ml)
(4)MPO-ANCA陽性
(5)リウマトイド因子陽性
(6)肺浸潤陰影


重症度分類

ここで述べる重症度は、患者の状態を分類したもので、後述の治療の欄で述べる「治療方針決定のための重症度」とは異なる。
以下の1度から5度に分類する。

1度:

免疫抑制療法(ステロイド、免疫抑制薬)の維持量あるいは投薬なしに1年以上血管炎症状※1を認めず、寛解状態にあり、血管炎による不可逆的な臓器障害を伴わず、日常生活(家庭生活や社会生活)に支障のない患者

2度:

免疫抑制療法を必要とし定期的外来通院を必要とするが、血管炎による軽度の不可逆的な臓器障害(鞍鼻、副鼻腔炎、末梢神経障害など)および合併症は軽微であり、介助なしで日常生活を過ごせる患者

3度:

血管炎により、不可逆的な臓器障害※2ないし合併症を有し、しばしば再燃により入院または入院に準じた免疫抑制療法を必要とし、日常生活に支障をきたす患者

4度:

血管炎により、生命予後に深く関与する不可逆的な臓器障害※2ないし重篤な合併症(重症感染症など)を有し、強力な免疫抑制療法と、臓器障害•合併症に対して1ヶ月以上の入院治療を必要とし、日常生活に大きな支障をきたし、しばしば介助を必要とする患者

5度:

血管炎症状による、生命維持に重要な臓器の不可逆的な臓器障害※3と重篤な合併症(重症感染症、DICなど)を伴い、原則として常時入院治療による厳重な治療管理と、日常生活に絶えざる介助を必要とする患者。これには、人工透析、在宅酸素療法、経管栄養などの治療を必要とする患者も含まれる。


※1;血管炎症状;以下のいずれかを認めること

  1. 発熱(38℃以上、2週間以上)
  2. 体重減少(6ヶ月に6kg以上)
  3. 関節痛、筋痛
  4. 多発性単神経炎
  5. 副鼻腔炎、
  6. 紫斑、手指•足趾潰瘍
  7. 肺浸潤影または間質性陰影を伴う喘鳴、咳嗽などの呼吸器症状
  8. NYHA2度の心不全徴候
  9. 虚血による腹痛
  10. 蛋白尿、血尿、腎機能異常

※2;以下のいずれかを認めること

  1. 下気道の障害による呼吸不全(PaO2 60 Torr未満)
  2. 血清クレアチニン値が5.0〜7.9 mg/dl程度の腎不全
  3. NYHA3度の心不全徴候
  4. 脳血管障害
  5. 末梢神経障害による知覚異常および運動障害
  6. 消化管出血
  7. 手指•足趾の壊疽

※3;生命予後に深く関与する不可逆的な臓器障害

  1. 在宅酸素療法が必要な場合
  2. 血清クレアチニン値が8.0 mg/dl以上の腎不全
  3. NYHA4度の心不全徴候
  4. 脳血管障害による完全片麻痺(筋力2以下)
  5. 末梢神経障害による筋力全廃(筋力2以下)
  6. 腸管穿孔
  7. 切断が必要な手指•足趾の壊疽
研究代表者 針谷正祥 ご挨拶
血管炎各疾患の解説
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